号泣した演奏

ご卒業、ご入学、ご進級、おめでとうございます。
暖かくなってきましたね。
もっと早く書きたかったのですが、この春高校生になる生徒くんの事について書き残したいと思います。

昨年の夏の出来事でした。
合唱コンクールの伴奏を任されてしまい、私の教室を訪ねて来てくださった中学3年生のA君でした。楽譜を見せていただいた時、私「えぇっ」と思いました。上級の合唱伴奏という感じでした。音もリズムも複雑で、中学生にこれを弾かせるのはかなり弾ける子じゃないと相当苦労するはず。ピアノを少し習った事がある(今は習ってない)A君にとって自力で練習するにはあまりにも難しい曲だった事でしょう。受験も控えている3年生に、一人一人の実力も確かめずに丸投げする学校の先生に正直腹が立ちました。
それでも、クラスの友達に任されてしまったのですから「できない」なんて言えませんよね…。簡単にアレンジしようか?という私の提案にも「いや、そのまま弾きたいです」と。そうですよね…だってクラスの皆は見本の演奏聞いて選曲しちゃってる訳だから、簡単バージョンにしてしまったら「あれ?」って思われるのも嫌ですよね。死ぬ気で頑張るとの応えでした。よし分かった。じゃあやってみよう、と始めた練習。
何度も言いますが、楽譜が難し過ぎます。音が多過ぎてリズムが複雑すぎて、A君は譜読みも難儀する状況です。1から基本を教えている時間はないし…うーん…と思ってる私に「見本演奏があれば弾ける」というA君。いわゆる耳コピとか目コピというやつです。なにしろ時間がありません。A君の言葉を信じて、やった事もさせた事もないけれど、私の見本演奏を少しずつ動画で撮って、それを見て練習してもらう事にしました。
20ページ近くある楽譜でした。A君は猛特訓を重ね、簡単アレンジにすることなく立派に曲を仕上げました。びっくりしてしまいますがA君は全部暗譜で弾きました。(通常、合唱の伴奏は暗譜はしません)
あれほどの曲を、全部暗譜してしまう程の練習、相当な努力です。ピアノが得意な子が仕上げるよりも何百倍も何千倍も大変だったはず。現代でこんなに頑張れる子が他にいるでしょうか?受験勉強と両立しながら物凄い努力だったと思います。側で見守っていらっしゃったお母様も応援と心配と…きっと複雑な想いだった事でしょう。
迎えた学校の本番、立派に役目を果たしてきました。
「最優秀伴奏者賞」というのは彼の為にある賞だと思っていたのですが、残念ながら学校の先生方には何も伝わらないのですね。伴奏者賞は隣のクラスの生徒さんが取ったそうです(しかも隣のクラスも同じ曲を選曲したという、酷な状況)。コロナでなければ、私もA君の学校の合唱コンクールを見に行ったのですが、叶わず、後日お母様が動画を見せて下さいました。

私もう号泣です。
こんなに心を震わせる演奏、過去になかったかもしれません…
学校では評価されなかったけど、私とお母様の中では間違いなく「最優秀伴奏者賞」です。

そんな彼はこの春高校生です。
一度教えた事は瞬時にすぐ覚えてしまう賢いA君だから、きっと志望校にも合格したはず。
きっと高校でも、あの真っ直ぐで強くて優しい心で、これから出会う沢山の人に愛される事でしょう。
いつかまた会えるかな〜




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